電子ブロック工房

KM-BASIC for MIPS ver 1.1

2015年12月23日

ケンケンさんのSDカードブートローダーのRev.2に対応し、かつ、PS/2キーボードの使用に対応した、KM-BASIC for MIPSのver 1.1を公開しました。ダウンロードの為のリンクは、記事の最後にあります。

2015-12-23-canvas.png
(キャプチャー画面は、HTML5によるエミュレーターからのものです。)

現在、ケンケンさんと共同で、PIC32MX250F128Bを用いた、スタンドアローンな1ボードコンピューターを作るべく、作業中です。今回のKM-BASICのver 1.1は、その様な方向性を目指して作られたもので、主な変更点は、以下の通りです。

 1.2015年11月21日に変更されたPIC32TVGSの仕様に対応。
 2.PS/2キーボードに対応。
 3.INKEY() INPUT$() VAL() DEC$() の4つの関数を追加。
 4.TVRAM() ASC() PEEK()が、0x80-0xFFの値に関して負の数を返していた不具合を修正。
 5.DIMステートメントにより配列を定義した際、すべての要素がゼロになるようにした。
 6.単項演算子、「-」「+」を追加。
 7.LABEL定義されていない飛び先にGOTOするとリセットされる不具合を修正。
 8.同一のLABELを複数回使用している場合に、コンパイルエラーが出るように修正。
 9.引数を持たないPRINT文に対応。

以下は、readme.txtから、BASIC言語の文法等に関する記述の抜粋です。
<BASIC言語の書式>
BASICプログラムの記述は、行番号式、ラベル式、その混合、いずれの方法でも構
いません。以下、仕様について述べます。

<利用可能な変数型>
利用できる変数の型は、32ビット符号付整数(-2147483648 ~ +2147483647)と、
文字列型の2種類です。文字列の末端部には0x00が付加されます。

A-Zの26個の整数型変数が利用可能です。文字列として扱う場合はA$のように記
述します。ただし、A(整数型)とA$(文字列型)を同時に使用することは出来ま
せん。

整数型の定数は、10進法で記述します。16進法を使う場合、「$1200」のよう
に、頭に「$」を付加するか、「0x1200」の様に表記して下さい。

文字列型の定数は、「"」で囲って記述してください。「"」を使用する場合は、
「CHR$($22)」のように記述することが出来ます。

<命令>
以下、x, y, z等は整数値を、x$, y$, z$は文字列を指します。xxx, yyy, zzz, 
www等は任意のステートメントを指します。[ ]は省略可能で有る事を示します。

命令同士を「:」で区切ることにより、一行で複数のコマンドを処理すること
が出来ます。

BGCOLOR r,g,b
	背景色指定。
CLEAR
	すべての文字列型変数と整数型配列を破棄し、整数値を0とする。
CLS
	スクリーン消去。
COLOR x
	テキスト色指定。
CURSOR x,y
	カーソル位置指定。
DATA x[,y[,z[...]]]
	データー列を整数値で指定する。
DIM xxx [, yyy [, zzz [, ... ]]]
	整数型の一次元配列を割り当てる。
	xxx,yyy,zzzは、例えば「A(10)」のように記述する。この場合、A(0)から
	A(10)までの11個の整数型変数が確保される。
DRAWCOUNT
	DRAWCOUNT値を指定する。DRAWCOUNT値に付いては、DRAWCOUNT()関数を
	参照。
END
	BASICプログラムを停止する。
EXEC x[,y[,z[...]]]
	機械語を実行する。ただし、x,y,zは32ビット整数値。
FOR x=yyy TO zzz [ STEP www ]
NEXT
	yyyで示された計算結果をxに代入し、xの値がzzzになるまで次のNEXT文
	までのステートメントを、繰り返し実行する。繰り返しのたび、xの値は
	wwwずつ増加する(省略された場合は1ずつ)。「NEXT」の次に何も記述
	しないことに注意。
GOSUB xxx
	現在の実行位置を記憶し、xxx行目に移動する。
GOTO xxx
	xxx行目に移動する。
IF x THEN yyy [ ELSE zzz ]
	xが0以外のとき、yyyを、0のときzzzを実行
LABEL xxx
	GOTO/GOSUBのジャンプ先を登録する。xxxは、英数字6文字以内の文字列。
[LET] x=yyy
	yで示された計算結果を、xに代入する。「LET」は省略可。
[LET] x$=yyy
	yyyで示された文字列(もしくは連結結果)を、x$に代入する。「LET」
	は省略可。
MUSIC x$
	BGMを演奏する。詳細は、下記<MUSIC>の項を参照。
PALETTE n,r,g,b
	パレット指定。
POKE x,y
	xで示される物理的アドレスに、yで示される値(1バイト値)を書き込む。
PRINT [ xまたはx$ [ ,または; [ yまたはy$ [ ... ]]]]
	ディスプレイに、整数値または文字列を表示する。「;」を使用した場
	合、次の表示が続けて行われる。「,」を使用した場合、10文字ずつ
	に区切って表示される。どちらも使用しない場合、次の表示は行を変え
	て行われる。
REM xxx
	何も実行しない
RESTORE xxx
	DATA読み出し開始位置を指定。xxxは行番号もしくはラベル。
RETURN
	最後に実行されたGOSUB文の次のステートメントに移動する。戻り値を指
	定することがができる。この場合の戻り値はGOSUB()関数にて取得が可能。
SOUND xxx
	効果音を再生する。詳細は、下記<SOUND>の項を参照。xxxは行番号もしく
	はラベル。

<関数>
以下、x, y, zは整数値を、x$, y$, z$は文字列を指します。[ ]は省略可能で有る事
を示します。

ABS(x)
	xの絶対値を返す。
ASC(x$)
	文字列の最初の一文字の、アスキーコードを返す。
DRAWCOUNT()
	DRAWCOUNT値を得る。DRAWCOUNTは16ビット整数値で、1/60秒ごとに1ずつ
	増える。
GOSUB(xxx)
	GOSUBと同じだが、戻り値(RETURNを参照)を得ることが出来る。xxxは、ラベ
	ルもしくは行番号。
INKEY()
	現在押されているキーのASCII値を返す。押されていない場合は、0。
KEYS([x])
	キー入力を得る。xの値は以下の通り。xを指定しない場合は、x=63と同じ。
		KEYUP:    1
		KEYDOWN:  2
		KEYLEFT:  4
		KEYRIGHT: 8
		KEYSTART: 16
		KEYFIRE:  32
LEN(x$)
	文字列の長さを返す。
MUSIC()
	BGMの演奏の残り数を返す。
NOT(x)
	x=0の場合に1を、そうでない場合に0を返す。
PEEK(x)
	xで示される物理アドレスから1バイト読み取り、返す。
READ()
	DATA文の後から、一つずつデーター(整数値)を読み出す。
RND()
	0から32767までの擬似乱数を返す。
SGN(x)
	xの符号(-1, 0, または1)を返す。
STRNCMP(x$,y$,z)
	2つの文字列のうちz文字を比較し、結果を返す。同じ文字列の場合は0。
TVRAM([x])
	ビデオRAMのx番目の内容を、バイト値で返す。xを省略した場合、ビデオ
	RAMの開始位置の物理アドレスを返す。
VAL(x$)
	10進数もしくは16進数文字列としてのx$の値を、整数値で返す。
A$(x [,y])など
	xの値が0の場合、文字列全体を返す。
	xの値が正の場合、xで示される位置より右側の文字列を返す。
	xの値が負のとき、文字列の右側x文字を返す。
	yが指定された場合、y文字分の文字列を返す。
CHR$(x)
	xをアスキーコードとする文字を返す。
DEC$(x)
	xの値を、10進数の文字列として返す。
HEX$(x [,y])
	xの値を、16進数の文字列として返す。yが指定された場合、yバイト長の
	文字列になる。
INPUT$()
	文字列入力状態になり、入力が終了すると(Enterが押されると)文字列を返す。

<演算子>
-x
	符号を反転
x + y
	整数加算
x - y
	整数減算
x * y
	整数乗算
x / y
	整数除算
x % y
	整数剰余
x = y
	2つの整数値が等しい場合に1、そうでないときに0
x != y
	2つの整数値が等しい場合に0、そうでないときに1
x < y
	xがyより小さい場合に1、そうでないときに0
x <= y
	xがyより小さいか等しい場合に1、そうでないときに0
x > y
	xがyより多きい場合に1、そうでないときに0
x >= y
	xがyより多きいか等しい場合に1、そうでないときに0
x AND y
	xとyの値のビットごとの AND(論理積でないことに注意)
x OR y
	xとyの値のビットごとの OR
x XOR y
	xとyの値のビットごとの XOR
x$ + y$
	文字列の連結

なお、整数演算子の優先順位は、優先度が高いものから以下の順です。

+ - (単項演算子)
* / %
+ - (加算・減算)
< <= > >=
= !=
XOR
AND
OR

<MUSIC>
MUSIC命令では、BGM用のデーターを文字列で指定します。文字列の書式は、ABC 
notationに準拠しています。ただし、すべての記法が使えるわけではありません。
なお、キーや速度などのデフォルト設定値は以下の通りです。

Q: 1/4=90
L: 1/8
K: C

BGM演奏時に一度に設定できる音の数は、31迄です。これを超えて音楽を再生したい
場合は、MUSIC()関数の戻り値を調べ、その値が十分小さくなってから、次のMUSIC命
令を実行するようにします。

添付のmusic.txtに、使い方に関するサンプルがありますので、参考にして下さい。

<SOUND>
SOUND命令では、DATA列のデーターを、行番号もしくはラベルで指定します。SOUND命
令による効果音再生中は、BGMは再生されません。また、前の効果音が終わる前に次
のSOUND命令を実行すると、前の効果音の再生は停止し、新しい効果音がすぐに再生
されます。

DATA列では、32ビット整数値として、交換音を表現します。この整数値の下位16
ビットは周波数の指定です。2048が440Hz(ラの音)に対応します。値が大きくなるほ
ど、より低い音が出ます。上位16ビットは、音の長さです。1が、1/60秒に相当し
ます。最後に、65535以下の値で、効果音の繰り返し回数を指定します。これらのデー
ターの数は、32を超えないようにして下さい。

添付のsound.txtに、使い方に関するサンプルがありますので、参考にして下さい。

また、readme.txtには、KM-BASICを使用する上でのヒントを書き加えました。この部分は、ユーザーからの質問等があれば、今後も書き加えていくつもりにしています。

<ヒント>
FOR文では、TOステートメントの次に書かれた値に合致する場合(超えた時ではなく)
に、ループから抜ける仕様です。また、FOR-NEXTループの途中で、GOTO文でループの
外に飛んだり、RETURN文を実行したりすると、予期せぬ結果(機器のリセット等)を
引き起こします。ただし、GOSUB文でサブルーチンを呼んだり、別のFOR-NEXTをネス
トして使う事は可能です。

ON GOTO分やON GOSUB文はサポートしていません。ただし、例えば次のように記述す
ることで、同様の動作をさせることは可能です。
 GOSUB 10000+A
 ....
 10000 PRINT "A=1" : RETURN
 10001 PRINT "A=2" : RETURN
 10002 PRINT "A=3" : RETURN

一行中で連続して文字列を扱うと、"String too complexed"と言うエラーがでて、
停止することがあります。この場合は、文字列を扱う命令を、独立した行にして
試してみて下さい。

私のテスト環境では、ケンケンさんの回路と若干異なる回路を用いていますが、RA1の出力を用いてタクトスイッチとPS/2キーボードとのやりとりを制御する仕様は同じです。
2015-12-23-_ver110.png
主な変更点は:

 ・PS/2キーボードを制御するのに、MOSFET-Nを用い、キーボードの電源をオン・オフする様にした。
 ・リセットスイッチを省略した。
 ・オーディオのボリュームを、330Ω固定にした。
 ・RB6の出力(PIC32MX150F128Bのみで、250Fでは使えない)から、390Ωの抵抗を介して、ビデオラインにつないだ。

といったところです。最後のRB6の部分は、この記事で扱っているKM-BASICとは関係ありませんが、KM-Z80 game (ケンケンさんの回路用の、MZ-80Kエミュレーター; SDカードブートローダーrev.2対応のものは、近日中に公開予定)で表示を明るくするために必要です。無くても、KM-BASICは問題なく動きますし、KM-Z80 gameも、表示が若干くらいだけで実行に支障はありません。

実機は、こんな感じです。回路図で+3.3Vのところが+3Vに、+5Vのところが+4.5Vになっていますが、私の環境では問題なく動くようです。
2015-12-23-Image.png

今後の方向性としては、ケンケンさんが、このKM-BASICにテキストエディター機能を追加して下さることになっています。そうなれば、KM-BASICをSDカードブートローダーにロードされた状態で、アプリケーションの変更無しに様々なBASICプログラムを作成・実行・編集する事が可能になると思います。

KM-BASIC for MIPS ver 1.1は、ここからダウンロードできます。

バイナリーのHEXファイルは、2つあります。日本語キーボード(106 キーボード)で使用する場合は、basic106.hexを、USキーボード(101 キーボード)で使用する場合は、basic101.hexを利用して下さい。その他の使用方法は、以前のバージョンと同じです。詳しくは、readme.txtを閲覧して下さい。

コメント

Katsumi (2015年12月23日 18:46:04)

ver 1.1のreadme.txt中の文法説明で、誤植があります。"INKEY$()"ではなく"INKEY()"で、返すのは文字列ではなく整数値です。ブログ中では、修正しました。

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